
DMM事件を踏まえた責任範囲の明確化と税制・制度両面での暗号資産見直しが加速
前回の記事では、DeFiの紹介やDEXがなぜ規制の対象になりやすいのかについて取り上げました。今回はその流れを踏まえて、最近国内で発表された「金融庁、暗号資産管理システム事業者に事前届出制を検討」というニュースを、初心者の方にも分かりやすく解説していきたいと思います。
暗号資産の管理システムにも「事前届出」を求める動き
最近、金融庁が暗号資産の管理システムを提供する事業者に対して、サービス開始前に届け出を義務付ける制度の導入を検討していると報じられています。これは、「自分の暗号資産をどこが、どんな仕組みで管理しているのか」を国が把握できるようにする動きです。
DMM流出事件が議論を加速 ― 管理体制の透明性が課題に

この議論が注目され始めた背景の一つとして、2024年に発生したDMMビットコインの大規模流出事件を挙げる声もあります。報道によると、外部のウォレットシステム(Ginco)を使用していたものの、不正の原因はシステムの不具合ではなく、高度なハッキングや不正操作だったとされています。その過程で「管理の仕組み自体をもっと透明にすべきだ」という声が強まり、金融庁のワーキンググループでも、どの事業者がどこまで責任を持つか、あるいは管理体制の透明性をどう高めるかが議論されてきました。
現在、日本では暗号資産の売買を仲介する「交換業者」は登録が義務づけられていますが、資産の保管や管理を担う事業者(ウォレット提供者など)は対象外となっていたため、重要な部分が監督の網から漏れていたという指摘があります。
規制の「穴」を埋める方針へ ― 金商法移行や税制改正も検討
こうした背景を受けて、金融庁はこのギャップを埋めるべく、管理システム事業者にも一定の規制を導入する方向で検討を進めています。まだ最終案ではなく、2026年の国会に向けて法改正案をまとめることが目指されているとの報道があります。さらに興味深いのは、暗号資産の法的位置づけそのものを見直す動きです。金融庁は、従来の資金決済法からより厳しい規制を持つ金融商品取引法への移行も検討中という報告があります。もしこれが実現すれば、暗号資産はより「投資商品」として扱われやすくなり、ETFといった新商品が登場する可能性もあるという見方があります。また、税制面では現在最大55%となる税率が20%へ下がる可能性もあり、市場環境が大きく変わるかもしれません。
参考:金融庁
ただし、これらは全て現時点では「検討中」の段階であり、確定したものではありません。制度変更が実際に行われるかどうか、また具体的な内容がどうなるかは、今後の報告書や国会での議論を注視する必要があります。
誰が資産を管理しているのか把握する習慣を
暗号資産市場は急速に成長していますが、その成長に伴ってリスクも大きくなっています。こうした制度整備には時間がかかりますが、投資家としてまず重要なのは、自分の資産を「どの会社」 「どんな仕組みで」管理しているかを確認する習慣を持つことです。市場が成熟するほど、安全な管理体制や責任の明確化はますます重要になります。今回の事前届出制の検討も、こうした流れの中で重要なステップだと言えるでしょう。

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